PHP研究所は1946(昭和21)年11月3日に松下幸之助創設者によって産声をあげました。太平洋戦争直後の混迷した世相を目にした創設者は、「これが人間本来の姿なのだろうか」という疑問を持ち、次のような思索に至りました。「これが人間の避けることのできない姿であれば、仕方がない。しかし、人間というものは、限りなき繁栄と平和と幸福というものを、原則として与えられている。 それがそのようにいかず、悲惨な世相を招いているのは、本来は与えられているものをみずから捨てているからだ」〈1968(昭和43)年11月3日〉。

このように創設者は、人間が自身の小賢しい知恵や過ぎたる欲望に捉われ、その繁栄を壊していることを憂えていました。そこでまず我々が、そういう考え方を改め、本来与えられているはずの繁栄、平和、幸福を、衆知を集めて人々に訴え、呼びかけていけば必ず求められる、という決心に至ったのです。

爾来、お蔭を持ちまして、幾多の先人や有識者とともに研究活動を続け、出版・普及活動、また啓発・実践活動を続けてくることができました。長きにわたる皆様のお力添えに心より感謝申し上げます。

その一方で、世界は新型コロナウィルスの蔓延により、健康面のみならず経済的な問題も含め、かつてない危機に見舞われるようになりました。しかし、私どもは今こそ、創設時の願いに立ち返り、綱領「天地自然の中に繁栄の原理を究め 進んでこれを社会生活の上に具現し 以て人類の平和と幸福とを招来せんことを期す」ことに徹して参りたいと存じます。

私には、心に留め置いているモットーがあります。それは、本当に困難な状況にあっても、どこかに解決のヒントがあるということ。私自身、これまで八方塞がりの状況に追い込まれた経験が度々ありました。ただそんな状況にあっても、核となる課題をしっかりと見つけ、それに適切な処方を考え、変化をいとわず、地道な活動を積み重ねていくことで、何とかハードルを越えることができました。

ウィズコロナの状況下、考えられないくらいの著しい変化が起こっている日本。これからどんな変化があるか想像もつかないような中で、新生PHP研究所は、現在の事業分野を根本から見直し、みずから変わる姿勢を貫いて社会のソリューションのために最大限の努力をして参ります。

困難は必ず乗り越えられる。PHP研究所が社員一人ひとりの力を結集して、社会に価値あるコンテンツを提供し、この苦難を乗り越える先導役となる。その強い思いを以て活動して参りますので、皆様方には益々のご指導、ご鞭撻をどうぞよろしくお願い申し上げます。