PHPとは、Peace and Happiness through Prosperity (繁栄によって平和と幸福を)という英語の頭文字をとったものです。
昭和21年。第2次世界大戦に敗れた直後の日本は、東京、大阪はじめ主要都市の大半を爆撃によって破壊され、人びとは家を失い、着るものもなく、その日の食料にも事欠くというきわめて困窮した状態にありました。そうした中で占領軍の監督のもと復興再建の歩みが始まりましたが、それは順調には進展せず、世情はむしろ悪化の一途を辿っていました。当時の法律法令や仕組みには、社会の実情や人情の機微に即さないものも多く、そのために、まじめに働けば働くほど、まじめに物をつくればつくるほど損をする、正直者がバカを見る、法を犯さなくては生きていけないといった姿が、あちこちに見られました。
大正7年に松下電器(現パナソニック)を創業以来、27年間にわたり社長としてその経営に打ち込んできた松下幸之助は、戦後のそうした混乱、混迷の中で次のように考えたのです。
「自然界に生きる鳥や獣は山野を嬉々として飛びまわっている。それなのに、万物の霊長といわれるわれわれ人間が、なぜこれほど不幸に悩み、貧困に苦しまなければならないのか、これが人間本来の姿なのだろうか。いや、決してそうではあるまい。人間はもっともっと物心ともに豊かな繁栄のうちに、平和で幸福に生きることができるはずだ。現に人間だけが、太古の昔から今日に至る間に、精神的にも物質的にも驚くほどの進歩発展をなし遂げてきている。だから、必ずどこかに、繁栄、平和、幸福につながる道があるはずだ。それをなんとかして求めてみたい。」
このいわばやむにやまれぬ思いを世の人びとに訴え、PHP実現への道をともどもに考えあっていきたいと思い立った松下幸之助は、昭和21年11月3日、PHP研究所を創設し、自ら所長として活動の第一歩を踏み出します。以来今日まで、PHP研究所は研究、出版・普及、啓発・実践を3つの柱として事業を展開、2016年には創設70周年を迎えることができました。
PHP研究所は、これからも創設者松下幸之助の遺志を引き継ぎ、よりよき2l世紀の日本と世界の実現をめざして、それぞれの活動に励んでまいります。より一層のご愛顧、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。