ついに最終巻です。愛菜、彩加、理子、亜紀それぞれの話を書いてみました。これからも、彼女たちは自分の場所で、力強く生きていくだろうと思います。どうぞ、彼女たちの旅立ちを見届けてください。
この物語を最初に書いてからおよそ10年。最初は1巻で終わりにするつもりでしたが、応援してくださる方々のおかげで、ここまで長く書き続けることができました。多くの方に愛され、ドラマ化もされましたし、幸せな作品になりました。ありがとうございます。
書いている間は自分自身も書店員のような気持ちでいましたし、書店についてのニュースなどにも欠かさず目を通していました。なので、シリーズが終わるというのは、寂しいような、支えが無くなったような、頼りないような気持ちです。でも、何があっても雑草のように立ち上がる理子や亜紀のように、私もこれからも書き続けたいと思います。どうぞ、これからも応援よろしくお願いします。
女性ふたりの「相棒(バディ)もの」を書きたい、というアイデアが最初にあった。相棒もの、つまり性格も考え方も違うふたりが困難な状況に追い込まれ、仕方なく協力して困難に立ち向かううちに、互いの能力を認め合うようになる物語。エンタテイメント映画では王道と言っていいこのパターン、だが、ごく一部の例外を除いては男性が主人公である。それが私には不満だった。
なぜ女性が主人公にならないのか。女性の場合、重要視されるのは容姿だったり、パートナーの社会的地位だったりして、その人自身の能力は二の次なのだ。仕事で突出した業績を上げたとしても、「あんなに頑張って、女捨ててまでやることないのに」なんて陰口を叩かれたりする。まあ、それも仕方がない。まだまだ女性の社会的な地位についての評価は曖昧なのだ。相棒ものが成立しないのも、女性の個としての存在が評価されないことの現れなのだろうと思う。
だけど、だから、職場を舞台にした相棒ものにしようと思った。現実には、女性の社会的進出は進み、女性がいなければ立ち行かない業界もある。そういうところでは、女性の力量が試されるし、女性であるがゆえの熱いドラマも生まれるだろう、と思う。
いろいろ考えた末、舞台は書店業界にした。もともと出版業界で20年ほど仕事をしていたので書店業界には馴染みがあったし、女性が頑張っている職場だということも知っていた。それに、何より私は書店が好きなのである。自腹で100軒以上、書店営業に周っているくらいだ。
そうして生まれたのが、この『書店ガール』である。女性ふたりのぶつかり合いや襲ってくる困難にはらはらしながら、最終的にはすかっとする本、読む人に元気を与えるような本を目指している。そして、読み終わったあとに、「書店って面白いな。書店に行ってみようかな」と思ってくださる方がいれば、作者としては何よりの喜びである。
―― 碧野 圭愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年、『辞めない理由』で作家デビュー。
書店や出版社など本に関わる仕事をする人たちのおすすめ本を集めて行われる夏の文庫フェア「ナツヨム2012」で、『書店ガール』が1位に。2014年、『書店ガール3』で静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」大賞受賞。
著書に「書店ガール」シリーズの他、フィギュアスケートの世界を描いた「銀盤のトレース」シリーズ、『情事の終わり』『全部抱きしめて』『半熟AD』『菜の花食堂のささやかな事件簿』などがある。また、小金井市を中心とした地域雑誌「き・まま」の編集にも携わっている。
めざせ!書店訪問100店舗:http://aonokei.cocolog-nifty.com/