大学卒業後に入社した大手広告代理店でパワハラに遭い、3年たたずに退職してしまった未谷千晴。働く自信と希望をすっかりなくしてしまった千晴だが、どうにか「普通の大人」に戻りたいと、叔母が経営する人材紹介会社を活用しながら転職活動をすることに。彼女はその会社で、「転職の魔王様」という異名を持つ凄腕キャリアアドバイザー・来栖嵐と出会う。
「仕事内容なんて何でもいいから、とにかく履歴書の空白期間を埋めたい。それが未谷さんのご希望ですか」
面談初日から不躾な態度で接してくる来栖に、千晴は戸惑うが……。
未谷千晴
(ひつじたに・ちはる)
「私は、どうすればいいんでしょうか」
新卒で大手広告代理店に就職するも、パワハラが原因で体調を崩し、3年経たずに退職。叔母の経営する人材派遣会社シェパードキャリアで転職活動を始める。
来栖 嵐
(くるす・あらし)
「そんなこと自分で決めてください。大人なんですから」
シェパードキャリア勤務。千晴の担当キャリアアドバイザー。成績は抜群だが、いつも求職者へ冷徹な対応をすることから「魔王様」の異名を持つ。とある事情により木製の杖をついている。
落合洋子
(おちあい・ようこ)
「姪っ子のこと、よろしくね」
シェパードキャリア社長。千晴の叔母。無職の千晴に自分の会社での転職活動を提案した。
広沢英里香
(ひろさわ・えりか)
「愚痴ならいくらでも聞くから」
ベテランで頼れるキャリアアドバイザー。童顔で小柄。シェパードキャリアに就職する前もキャリアアドバイザーとして働いていた。
横山潤也
(よこやま・じゅんや)
「魔王様気取りはやめた方がいいよ」
千晴と同い年の営業担当。スタンドプレーが過ぎる来栖に日々イライラさせられている。
タピオカ
「にゃあ」
千晴が大学3年のときに拾ったメスの白猫。洋子が引き取り、毎日洋子とともに出勤するコーポレートキャット。何故か来栖に懐いている。
人は働いてお金を稼がないと暮らしていけず、一日のおよそ三分の一を労働に費やします。どんな仕事を、どんな場所で、どんな人と一緒にするか。それはそのまま「人生をどう生きるか?」という問いにつながる。だからこそ、「転職」にはたくさんのドラマがあるはず――それが『転職の魔王様』という物語のスタートでした。働き方がめまぐるしく変化していく時代に、思い悩み立ち止まってしまった人へ、疲れ切って座り込むしかない人へ、作中の彼や彼女の言葉が、何かしらのヒントになったら嬉しいです。
1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。
著書に、『沖晴くんの涙を殺して』『風に恋う』『できない男』『タスキメシ箱根』『タスキメシ』など多数。