月刊「PHP」2025年4月号 裏表紙の言葉
桜の蕾がいつの間にかふくらみ、いつか一輪花が咲き、見る間に開花、春の訪れを告げる。それを合図に社会のあちこちで新風が行き渡る。真に春は自然の演出のもと、初々しく事が始まる素敵な季節である。
ただ一方で、春は憂鬱な時期でもある。始まるのはよしとして、始めることは意志をともなう。学ぶべきことを学び、企てたことを実行しなければならない。成果よりストレスが先にやってくるのはたまらない。
始めたくても、いつも躊躇して始められない人もいる。失敗の挫折感を味わいたくないし、恥もかきたくないからか。構えるほどに、始めることは一大事になってしまう。
俳人高浜虚子は、初めて俳句を創ろうとする人に、「何でもいいから十七字を並べてごらん」と説き、参考書ばかり読んでなお句を詠まない人には、「どうでもいいからとにかく十七字を並べてごらん」と述べている。
至らないのは承知の上、とにかく一歩を踏み出そう。桜の花びらが舞いながら、「時間がないよ」と背中を押してくれているのだから。