PHP研究所主催 2024年度文部科学省後援
第8回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作

古田小晴
福岡県福岡県立折尾高等学校 3年

写真は私にとって大切な宝物である。私は小さいころから写真や動画を撮影することが好きで、おもちゃのカメラやゲーム機でよく友達や家族を撮影していた。「どのような写真が撮れたかな」と確認する作業が大好きで、今でもたくさんの写真や動画を撮影している。

私が中学生のとき、祖父は認知症を患った。父から聞いたときは理解ができなかった。「あれほど元気だった祖父が認知症になるなんて」という考えで頭がいっぱいになった。

高校生になると祖父に会う機会は減ってしまった。ある日私は父につれられて祖父の家に行った。私が双子なこともあり、祖父は私の名前がどちらなのかを迷っていた。少し時間が経つと、私の名前を絞り出して昔のように話しかけてくれた。祖父が私の名前をまだ覚えてくれていることがとてもうれしかった。

祖母が突然、私が2歳ごろの写真を机いっぱいに広げた。幼くてとても昔のように思えた。私が祖母や祖父に抱かれている写真、祖父の膝に乗っている写真。どれも祖父母が幸せそうに写っており、胸がいっぱいになった。写真を見て祖父が「こんなにかわいくて幸せな時期もあったね」と涙目で言った。写真を見て、少しのあいだ忘れていた昔の記憶がよみがえったように思えた。お互いに年を重ねても写真の中の私たちの思い出は決して変わらない。幸せそうに写真を眺める祖父を見て、私はぐっと涙をこらえた。

写真や動画からはそのときの感情や出来事、撮影当時の流行などを汲み取ることができる。友達や家族が幸せそうに笑っている瞬間をカメラに収めることができたとき、さらに宝物が増える。アルバムを見返したときに全身が幸福感で満たされるような写真。すべてが私の宝物だ。今生きている幸せな瞬間一つひとつを忘れないように、これからも宝物を増やしていきたい。

月刊「PHP」最新号はこちら

定期購読はこちら(送料無料)