月刊「PHP」2025年1月号 裏表紙の言葉
ときどき、健気にインタビューに答える人がいる。事件に遭って、心が折れているはずなのに、その人は何を気遣うのか、つくり笑顔で記者の不躾な問に必死で応じている。
道行く人の中にも、じつは学校でいじめに遭って必死に闘っている、あるいは仕事の目標に追い詰められて限界に近い状況にいる人がいるだろう。切羽詰まっているのに、何でもないふりをして、雑踏の中に消えていく。
このように人知れず、じつは孤独で無人島にいるかのごとき思いをしている人がたくさんいる。つくった笑顔の皮を一枚めくれば、そこにあるのは憂い顔。そんなギリギリにいる人とはほかでもない、心底疲れ切った自分だったりするのである。
そのギリギリの状態を打開するのに大切なこと。それは 近くの人と心を開き、互いの重荷を理解し、寄り添える者同士になることではないだろうか。
社会とは厳しいものだ。けれど、そこは無人島ではない。同じ島のどこかに、孤軍奮闘している仲間が必ずいる。さあ出逢いを求めてチームになろう。脱出劇の主人公となって。