月刊「PHP」2024年12月号 裏表紙の言葉
1970年4月某日。小学校の教室で先生が言った。
「アメリカから月へ発射されたアポロ13号に事故が発生し、3人の宇宙飛行士が宇宙にとり残されています。地球に戻るために多くの人が懸命な努力を続けています。私たちも宇宙飛行士のみなさんが無事に帰れるようにお祈りいたしましょう」
児童たちは息を呑んで無心に祈ったとか。
祈るとは人間だけの崇高な行ないだという。日常は利己的であっても、誰かの幸福がおびやかされそうなときに、人は他人のために祈ることができる。
絶えない戦争、事故、そして自然災害、今年も目をそむけたくなることが多々あった。しかし、絶望してはいけない。あの年あの日だって、世界中の祈りと叡智と努力が集まったおかげで、宇宙飛行士は生還できたのだから。
混迷の今、再び世界のために祈りを集めたい。地上から戦争がなくなり、疲れた地球が元の青さをとり戻しますように。その切なる人類愛に立って己をふり返るとき、大切な命の生かし方も自ずと変わってくるに違いない。