PHP研究所主催 2023年度文部科学省後援
第7回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作

内藤月海
静岡県浜松開誠館高等学校2年

信じられない気持ちと、ほこらしさを感じていた。中学校の部活で初めて入賞したときのことだ。

私が所属していた美術部の大会は3年間で計4回ある。1年生の大会は秋にあるため、入部してから練習の時間は充分にあった。結果が書かれた紙を先生が読み上げ、名前を呼ばれた人は前に出る。

しかし、その中に私の名前はなかった。同じ学年の友人はほとんどが呼ばれている。一方私は座って拍手をし、入賞者を祝う側にいた。「きっと入賞している」と声をかけ合った友人の名前もあり、とても悔しさを感じてしまった。

それから、次の夏の大会に向けて自分の絵と向き合う日々が始まった。どこをどうしたらよかったのか、どうすれば決められた時間内により技術の高い絵を描けるのか、考え続けた。しかし一向に上達せず、焦る私の前に、進級の時期はすぐにやってきた。

そんなあるとき、一人で上達しようと躍起になっていた私に、先生が言った。

「周りの人の絵を見て技術を取り入れるのも練習だよ」

私ははっとした。絵は一人で描くものだが、一人で上達するものではなかったのだ。「個人戦ではなく、団体戦」という言葉を思い出していた。

先生から言われた通り、みんなの絵と自分の絵を比べてみると、どうすればよくなるのかがすぐにわかった。上達しない日々は終わった。絵をほめられることも増え、上達していることを実感した。

そして迎えた、夏の大会の結果発表。その中には、しっかりと私の名前があった。それまでの努力が報われたようだった。

そんな経験をした私は「失敗は成功のもと」だということを、だれよりも実感している。もちろん、どう成功につなげるかは、その人次第だと思う。しかし、悔しい思いを経験することができた私は、いつまでも嘆いたり、一人で考え込んだりするよりも前にできることがあると知った。これからも、それを忘れずに生きていきたいと思う。

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