月刊「PHP」2024年9月号 裏表紙の言葉

空港に行けば必ず金属探知機をくぐる。見る間に探知され、時にはくぐり直しも命じられる。安全のためには必須の装置だと言えよう。

こんな探知ができたらよいと希望を言うなら、魔法のメガネがあってほしい。かければ相手の心の中が見えてしまうという代物。名前は「色眼鏡」。情報はみなレンズに表示され、視界にテロップが映る。

「感情」モードにすれば、相手の喜怒哀楽の状況を色模様で教えてくれる。これさえあれば、安心して人と会話ができる。「価値観」モードなら文字情報で、性格や人格のほか、政治的信条から金銭感覚まで瞬時に表示。お互いの理解を早めてくれる。それによって社会の断絶、国家の対立が解消されたら本物だ。

けれども、そんなメガネは百年経とうができやしない。できたって使うべきではない。何より自分自身の目で見るのが人間らしいのではなかろうか。ただ、すぐに曇りや偏見の色が入った眼鏡をかけてしまうのが大問題だ。素直な心で相手を慮り、無色透明にする努力が人として求められよう。

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