PHP研究所主催 2023年度文部科学省後援
第7回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作
河元千代乃
鹿児島県池田高等学校1年
私の人生を変えた日。それは空のよく澄んだ一年前の夏の盛さかり、母方の墓を訪日のことでした。これまでくわしく見たことがなかった墓石にきざまれた文字を、何気なくながめていたとき、気にかかる文字が私の目に飛び込んできました。
「昭和20年、28歳没」
曽祖父の名前の下に、ひっそりときざまれた文字から目が離せなくなったことを覚えています。
曽祖父が太平洋戦争で亡くなったことは知っていたのですが、どの戦地で亡くなったかまでは聞いたことがありませんでした。この日から私は、写真も残っていない、遺骨も戻って来ていない曽祖父のこと、そして太平洋戦争について、もっとくわしく知りたいと思うようになりました。
まず私は、曽祖父の名前を求めて陸軍戦没者名簿をめくりました。ページが最後に近づいたころ、私は曽祖父の名前を見つけたのです。
「硫黄島」
曽祖父の戦死した場所でした。太平洋戦争の中でも激戦地と言われた硫黄島へ、曽祖父は守備隊として参加していたのです。苦しい状況の中で、負けを覚悟する状況の中で、どんな気持ちだったか、知るよしもありません。ただ曽祖父に会いたいと思いました。
硫黄島にはまだ、曽祖父のように日本に帰れぬ兵士が1万人も眠っています。まだ戦争は続いているのです。
終戦から80年。戦争の記憶が一つ、また一つと失われていく中で、私たちには何ができるのでしょうか。戦争は過去のものではありません。これは忘却との戦いです。私は戦争の記憶を次の世代へつげるように、もっと勉強したいと思います。
いつか世界から「戦争」という二文字が消えるように、世界が「平和」で満たされるように、私はどこまでも走り続けるつもりです。