月刊「PHP」2024年8月号 裏表紙の言葉

夏の清流。川面がキラキラと光を反射しながら、ゆっくりと流れる水の様相は悠久そのものだ。しかしながら、一見静かな佇まいのその流れも、何百年もの時を短時間で早回しで見ると、とてつもない変化の連続である。

山深く雨水を集めた源流が谷を彫り、平野に出ては岸を削り、砂を押し流して蛇行する。急流は生きもののように、左右の両岸をうがち、うねりを深め、いつか大雨で決壊(けっかい)すれば、もはや蛇行は絶たれて三日月形の池が残り、新たな本流ができている。

川には意思がないものの、自然の摂理が変化を招き、新しい景観を創造しているのである。だからそこで感じる悠久も、実は刻一刻と変化する水一滴の仕業にあると考えれば奥深い。

思えば、万物は流転するの言葉どおり、人の営みや私たちが創るさまざまな物やしくみも、大自然と同じであろう。自然の摂理に従い、日に新たに移ろいゆく。長い長い時を経て生まれたこの流れ。万物の共同作業によりこれからも、見えざる彫刻家の手で創作が続けられることだろう。

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