月刊「PHP」2024年5月号 裏表紙の言葉


こんなに強い力を持っているのに、私たちは風を見ることができない。こんなに優しく人の頬をなでるのに、感じるだけで風をつかむこともできない。
その丘に風があるのか、どんな風が吹いているのかを知るのには、丘に立つ旗のはためく様を見るしかない。
風は人の心の中でも吹いている。しかし、それまた容易に見えやしない。
心の中の丘陵で、大きな意志が宿るとき、旗ははためき、人は何かをし始める。1人の胸中の一陣の風が、となりの誰かの熱砂を巻き上げ、気づけば多くの人に熱風を送る。いつしかそれが社会を変える台風となっていくかもしれない。
滅多に起こりはしないだろう。けれども、個人ならず集団の思いとしても風は必ず宿るものだ。明日には明日の風が吹くように、私たちは私たちの求める風を、いつかその風をはらむ機会をつくっていこう。
何かを動かし、何かを変える。風神が持つあの大きな風袋に、自分の情熱、みなの思いを精一杯はらませて、人生にせめて1度は、大きな風を起こしたい。

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