PHP研究所主催 2023年度文部科学省後援
第7回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作
清武 琳
福岡県東福岡自彊館中学校3年
ファシリティドッグと呼ばれる犬がいる。病院で闘病中の子どもに寄り添い、励まし、心を癒やしてくれる犬たちだ。
僕がその存在を知ったのは、日本初のファシリティドッグ、ベイリーの引退を伝える新聞記事だった。5歳のときから手術入院を繰り返している僕は、病院に犬がいるなんて信じられなかった。小学4年生だった僕は、インターネットや本でファシリティドッグについて調べ、新聞に載っていたNPO法人に手紙を書いて資料を取り寄せた。
真っ白なゴールデンレトリバーのベイリー。知れば知るほど、僕はベイリーに夢中になった。恐怖に震え涙が止まらない手術の前夜や、術後のつらい治療に耐えるとき、今ここにベイリーがいてくれたら、どんなに心強いだろう、と思った。
5年生になった僕は、ファシリティドッグ導入のための活動を始めた。市長や院長先生に手紙を書いたが、返事はどれも、導入は難しい、というものだった。
その年、活動の経緯を書いて応募した作文コンクールで、僕は最優秀賞を受賞した。新聞を読んで感想を書くそのコンクールの表彰式は、ベイリーが暮らしている横浜で行なわれる。偶然、奇跡、幸運、運命。どんな言葉がふさわしいのかわからない。
僕の思いを知った新聞社の人や病院関係者などたくさんの人が協力してくれたおかげで、僕はベイリーに会うことができた。
ちょうど誕生日だったベイリーの誕生会にも参加した。一緒に夕暮れの公園を散歩した。真っ白でふわふわな毛に、僕をみつめてくれたやさしい黒い瞳。あの日のことを、僕は一生忘れない。
翌年、ベイリーは天国に旅立った。ベイリーに会えたこと。そしてたくさんの人が僕の夢を叶えるために力を尽くしてくれたこと。その両方の経験が、これからも続く手術のたびに、僕を大きな力で支えてくれるだろう。
ありがとうベイリー。大好きだよ。