PHP研究所主催 2023年度文部科学省後援
第7回PHP作文甲子園 中学生最優秀賞受賞作
中田敬悟
神奈川県藤嶺学園藤沢中学校3年
僕はスポーツが嫌きらいだ。速く走れないし速く走る方法も知らない。上手くできずに恥ずかしい思いをしたこともあるし、団体競技になると周りに迷惑をかけていて申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまい、居心地が悪くなって楽しいとは思えないからだ。
今年の冬、学校でスキー合宿があった。行く前からゆううつな気分で、とても寒い中、厚着で重い靴や板をはいて雪山で過ごすのは少し怖さも感じた。
友達は楽しみだと話していたし、母は合宿のために新しい服などを買ってきたが、当日まで僕の気持ちは沈んだままで、熱が出ればいいのにとか腹痛になってしまえばいいとか、そんなことを考えていた。
合宿の当日、やっぱり気分は落ち込んでいたが、友達と過ごす時間は楽しかったし少しずつできる部分で楽しもう、という気持ちも出てきた。やっぱり靴も板も重かったけれど、やるしかないのだから、と思うことにした。
寒くて嫌だと思っていた雪山も、非日常という感じでなんとなく落ちつかない気持ちを和ませてくれる景色だった。
そしてスキーはというと、もちろん生まれて初めてで上手くはできなかったが、斜面を滑るとき、冷たい風を受けて走るスピード感が爽快で、体はたしかに疲れているのにわくわくする感じが止まらず、いつまでも滑っていたいと思うほど楽しかった。
合宿が終わってもまた絶対来ようと、来る前とは正反対のことを考えていた。
僕はスポーツについて、競争に勝つとかほめられるとか、みんなから注目されるというようなことでしか満足を得られないのだと考えていた。
しかし今回スキーを通して自分自身が初めて心からスポーツを楽しめたことで、体を動かす爽快感や達成感、それを友達と共有する喜びが本当のスポーツの良さだと気づいた。それに、嫌だと思っていてもやってみれば意外と楽しかったりするんだなとも思うようになった。