月刊「PHP」2023年12月号 裏表紙の言葉

力の論理というとおり、力を持つことはたしかに大切であろう。国にせよ、個人にせよ、物事を成すためには力が必須で、実力がともなってこそ、国も組織も変革がなされ、幸福も築くことができる。
しかしながら、力を持つことで、国も個人も力に勝る者により劣る者が排除されたり、貶められたりしてしまうことがよくある。力を持つ前には謙虚でいたのに、力を持つと気位が高くなり、大切だったものを邪険に扱い、周囲の心を顧みようとしなくなってしまう。
力の論理が世界や社会をどれだけ害していることだろう。ライバルを蹴落とし、強者が弱者を救わない話ばかり。世の中のいさかいや不和が尽きないのは、力の論理だけで物事を動かそうとするからである。
力の論理よりも、心に訴える道理が行き届いているかが大切なのではないだろうか。あの人ならば信頼できる。あの国の方針こそ世界を平和にするという信用を持つこと。
綺麗事で世の中は動かない。けれども、心が納得して平穏に物事が動く、普通にそんな世の中でありたい。

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