月刊「PHP」2023年9月号 裏表紙の言葉
人間が瞬間移動したり、破った紙幣が復元されたりと、マジックは年々技術が向上し、幻想の世界が創り出される。
その感動があるから、人はさらに不可能な奇跡を望み、また新たなマジシャンが期待を超えるマジックを実現、進化を遂げる。
一方、奇想天外なマジックが実演されても、これまで本物の魔術を披露した人はいない。つまり、そこに超能力者がいるのではなく、当然ながら、マジックは数々の技術の組み合わせから、人間の思い込みを誘って巧みに演出される芸術だと納得するのである。
社会には、同様にマジシャンと呼ばれるカリスマがたくさんいる。たとえば、スポーツで見事な指揮を執り、いつも勝利を得る監督や、ビジネスで必ず利益を出す経営者もまた、マジックに見えて人の心理や情報を読み、自然の理にかなうことしかしていないのではないだろうか。
ただ、誰でもできる修練も、誰にもできないレベルまで熟練してこそマジックは成る。そのためには、やりぬく熱意とたゆまぬ努力が必要なのは言うまでもない。