月刊「PHP」2023年3月号 裏表紙の言葉
三月は期が革(あらた)まるときである。いろいろな目標が収束を見て、また新たな目標が定められていく。数字だけのことではなく、人びとの努力も同じように結果が残り、届かなかった悔しさやみずからを超えた喜びが交錯する。
革まるとは入れ替わるときでもある。卒業する人、退場する人がいれば、入学する人、登場する人がいる。こうして組織や社会全体が少しずつ変わっていく。過去を受け継ぎながら新たな時代が創造されていくのである。
例年桜の花芽は夏には形を成しながら、秋には休眠している。そこから桜が見事開花するには条件があり、すなわち、休眠中の花芽が、厳しい冬の寒さにしっかり晒されなければいけない。
いわば寒気こそ花芽を蕾へと促し、満開の日を演出するのである。切れ切れに舞う花びら一枚もそうした過程を経てのものとは、精妙な自然の摂理にただ驚く。
人間も同じではないか。雌伏の時があってこそ雄飛の時が来る。多くの若人らが精進した実力を以て、勇躍社会に旅立つ姿、これぞ春爛漫といえよう。