月刊「PHP」2023年1月号 裏表紙の言葉
人はいくつもの峠を越えながら年を重ねるものである。入学、就職、家族をもつ等々。そのたびに人との出逢いを喜び、別れを慈しむ時を迎える。
その一つひとつが峠であって、一年の移ろいの中でみれば大晦日から元日にかけては大勢の人が時同じく、過去から未来へ、大きな峠を越えていくわけである。
この一年をふり返れば、自分の境遇、日本の変化にも驚かされるが、世界では望まぬ戦端が開かれ、痛ましい一年であった。一方、未来の展望も視界明瞭とは言い難い。紛争が収束するという予見は出来ず、思い浮かぶのは政治、経済が一日も早く安定し、新たな平和への態勢が築かれてほしいという願望ばかり。
実際、世界がかつてない険峻な峠に立たされているのが今ともいえよう。ただ、人間は弱く愚かな存在ではない。古今東西の衆知を集め、正しい選択をすれば必ず新たな繁栄の一歩が踏み出せる。人間の可能性こそ希望であり、恐れてはならない。立ちすくむことなく、過去を省み、未来に挑むことだ。
ほら新春の朝焼けが峠を照らし始めた。