月刊「PHP」2022年7月号 裏表紙の言葉

心豊かな人は与えることが日常だとはいえないか。人に会えば自分から会釈をするしあいさつもする。時にはしゃれたひと言で場を和まし、周りに元気を与える。悩める人に寄り添い勇気を与え、人への支援にも躊躇することがない。
泉の如くではないが、与えるほどに心の余裕をもち、ムダとか損するという感覚とは無縁な人。それは感謝の心に満たされているから? 上機嫌のおすそわけ? 人の役に立ちたい無償の心からだろうか。
日本には、自分一人の幸福はありえず、周囲を幸福にすることが自らの幸福につながる「分福」という思想もあれば、誰かから受けた恩を別の人に送り、その人もさらに恩を送って世の中を恩がどんどん回っていく「恩送り」という考え方も伝わっている。最近では「利他」であろうか。
ふれあいが減り、人と人との距離は遠くなりがちだ。つい自分を守り、自分を利することに傾いてしまう。だからこそ、一人の人間として与える人でありたい。ともにこの世を生きる、遠くの人にも手を差し伸べられる、そんな人に。