月刊「PHP」2022年1月号 裏表紙の言葉
一年をふり返り、自分は総じて幸せな一年を過ごせたのか、それとも不幸せに耐えた一年だったのかを考える。受け止め方次第とはいえ、人それぞれに感慨深いことだろう。
そもそも、幸せにせよ不幸せにせよ、その状態が永遠に続くことはあり得ない。ツキがよくてもいつかは見放されるし、これ以上ない絶望も必ず時が癒やしてくれる。
不運に出遭っても耐え忍び、希望を捨てず、努力の末に得た成功の喜びが、何物にも代えがたいのは、自分の事でなくても共感できよう。
それを思えば、結局この世には幸福も不幸もないのではなかろうか。あるのは一つの状態と他の状態の比較だけ。心はその変化の大きさに素直に反応する。
だからこそ、生死の境をさ迷った、極貧を経験したという者のほうが、健康でいられる歓び、富める安らぎを、より強く味わえるのであろう。
そう考えれば、運不運に一喜一憂することはない。日々の出来事すべてを受け容れ、生かす心持ちさえあれば大丈夫。幸福はその人の心がけ次第でおのずと築かれていく。