月刊「PHP」2021年9月号 裏表紙の言葉
ともすれば、こう思いがちになる。なぜ自分だけ、いつも認められないのだろうかと。
そんな時、人は心の中に壁を築き、その不満を閉じこめることがあるという。それは言わば自我がつくり出す堅固な城の高い城壁。人からの慰めなど受けつけず、つのる不満は壁を高くするばかりで、とりつくしまもない。
それでいて、孤立無援の籠城戦では事態は変わらず、つまるところ、みずからがただ苦しみ続けるだけになってしまう。したがって、本当は心中に疎外感などいたずらに増幅させるべきではない。心を窮屈にさせては元も子もないではないか。
最初から素直に心を開いて、現実をよく理解して受け入れる姿勢こそ自然の理だといえよう。そうすればいち早く課題を解き明かす糸口が分かり、努力を惜しまなければ、評価もきっと変えることができる。
同じ城を築くなら、高邁な志による品格ある天守を形にしたい。誰もが仰ぎ見る理想の自分を象徴するものとして。人が城に憧れるのは、その存在が希望だからではないだろうか。