月刊「PHP」2020年12月号 裏表紙の言葉
今年もはや年の瀬を迎える。ふり返ると、やはり山あり谷あり、そして、かつてない国難に苛まれたものである。
世界の情勢は厳しい。日本の世情もまた然り。政治は紊乱しているに近く、国民第一、公正無私が貫かれているとは言い難い。
その一方で、日本人は落ち着いたもの。災害に遭って感情を乱さず、忍ぶ力に長けている。身の丈にあったつつましい幸福のありかも知っている。それは成熟した大人の国民だからであり、高い民度のゆえであろう。
とはいえ、耐えることに慣らされたお人好しであってはならないのではないか。もう少し社会の矛盾に公の怒りを示し、是は是、非は非を叫ぶこと。誰もがかくあるべしという意思を明示できれば、暮らしは必ず上向きになろう。
さて来年。どんな社会が出現するのだろう。不安を煽る風潮もある中、だからこそ今、衆知を集め、未来を語りあうべきではないだろうか。国民の総意と努力で楽土を築けるという夢に賭けてみたい。明るい未来図を描ける日本の底力を世界に示したいものである。