月刊「PHP」2020年5月号 裏表紙の言葉

青葉が繁るこの季節、陽気につられ仕事も好調であれば、気分は上々であろう。ただ、一方で調子よくきていたものが、最初の曲がり角を迎えるのもこの頃ではないだろうか。
自信とは不思議なもので、失いかけると一気に音を立ててくずれていく。加えて不安がつのれば、自己否定の悪循環に陥ることもしばしばである。
そんな時こそ、心をリセットして、一度肩の荷を下ろそう。自分を点検する最初の機会が来たと考えればよい。
めざましいスタートダッシュが切れればそれに越したことはない。けれども、カーレースでも適時ピットに入り、補給や修理、戦略の練り直しをするのが必須で、要するに走りっ放しでは勝てないように出来ている。人生も同じなのである。
それに近道もあれば回り道もあるのが人生ではないか。ともすれば近道を選びたくなるのは人情だが、あとからしみじみ幸運を感じるところこそ、回り道の奥深さであろう。
人生は長い。あせらず、時には回り道の風景を味わっておくことも得難い体験になるに違いない