月刊「PHP」2019年12月号 裏表紙の言葉

中国は三国志の時代、蜀の天才軍師諸葛孔明は、ある一戦に国の興亡をかけて、あらん限りの知略を立てた。それによって、蜀軍は大いに敵軍を打ち破ることができたのである。味方の諸将が意気揚々と自分の功を報告する渦中、名将趙雲は最後に帰陣するなり、ひざまずいて孔明に詫びた。
「あなたからこれほどの策をいただきながら、肝心の敵の大将を討ちもらしました」
小さな戦果を誇張する将が多いなか、最も功があった趙雲が孔明の無念を思い、自身も慚愧する様を見て、孔明はあらためてその志の高さに感嘆したという。
一年の終わりには、様々な結果が出る。目標を達成できた歓喜、手が届かなかった悔しさ、感慨は人それぞれあろう。
そこで、忘れたくないのは志である。小さな業績を評価しないというのではない。ただ、年の瀬とは一年の総決算、己の志をふり返り、足らざる自分を総括し、猛省を促すべき大切な時節ではないだろうか。
新年の飛躍を期すればこそ、わが志を問い直したい。