有川真由美(ありかわまゆみ)

作家・写真家。化粧品会社事務、塾講師、新聞社広告局編集者など、多くの職業経験を活かして、働く女性のアドバイザー的な存在として、書籍や雑誌などに執筆する。『女子が毎日トクをする 人間関係のキホン』(PHP研究所)など著書多数。

 

有川真由美さんの身近には"誰からも愛されている人"がいました

「こんな人がいるんだ」と新鮮なおどろきだった。こんな人とは、田舎暮らしを始めたときに近所に住んでいた桂子おばちゃんだ。
八十代、独身で子どももなく、一人暮らし。足が不自由で、車の運転もできない......というと、孤独で引きこもりがちの生活をイメージしそうだが、おばちゃんのもとには若い人から同年代の高齢者まで、次々と人が訪ねてくる。飲み会には誰かが連れていってくれる。
それどころか、みんなの司令塔のような存在で、地域の行事はおばちゃんが一人一人に「あんたが来んと!(あなたが来ないとダメ)」と声をかけ、裏で仕切っているのだ。
遠縁という二十代の女性は、「おばちゃんに声をかけてもらえるだけで嬉しい」と言うし、亡くなった親族がお世話になったという人は、大量の新米を届けにくる。
おばちゃんの姿は、私たちの老後の孤独とお金の不安を一気に片づけてくれるロールモデルのようだ。「みんなに愛されていれば、明るく、楽しく、心強く生きていけるのだ」と。
しかし、一見、控えめな八十代女性に、どうしてそんなに人を引きつける魅力があるのか。その力は、大きな包容力と、"自分から"愛する力なのだと、だんだんわかってきた。
「私を見て! 愛して!」と振る舞う人は、大抵、愛されない。本当に愛されるのは、そのままの相手をしなやかに受け入れてくれる人。自分からやさしさを提供できる人。そんな心地いい人からは離れられなくなり、「この人のためになにかしたい!」と強く思うのだ。

愛される人がしている五つのこと

桂子おばちゃんを見ていて、「これは上手い! 真似したい!」と思ったことがある。【愛される人がしている五つのこと】は......。

(1) とにかく共感上手であること
おばちゃんは、自分の話をするより先に、人の話をよく聴く。説教臭いことは言わない。ただ、「わかる、わかる」「私もそうだよ」と共感してくれる。私に悲しいことがあったときは、先に泣いてくれたことも。上下関係、敵味方なんて関係なく、誰に対しても同じ目線。人は「自分のことをわかってくれる」と思うほど救われることはないのだ。

(2) 喜ばせ上手であること
おばちゃんは「どうしてる?」とマメに連絡をして、人を気遣う。「たくさん咲いていたから」と野の花を摘んできたり、年末は「うちにはあるからもらって」とつきたてのお餅を届けてくれたり。親切が押しつけでないから、喜んで甘えられる。「やりたいからやっている」というスタンスが、喜ばせ上手のカギ。

(3) 自分が喜び上手であること
おばちゃんは、小さなことでも満面の笑みで「嬉しいね~」と純粋に喜んでくれる。私がお土産をもっていくと、あとから電話がきて、「あんな珍しいお菓子を食べたのは初めてだよ。近所のみんなも美味しいって食べてたよ」と報告までしてくれる。誰かに喜んでもらうことこそ、人として無上の喜び。喜び上手な人には、またなにかしたくなるのだ。

(4) 相手を立てる言い方上手であること
おばちゃんは、言いたいことも遠慮なく言うが、相手を立てる言い方をするので、すんなり受け入れられる。よくやっていることを褒めたり、相手の言い分を尊重したりしながら、「私は~と思うよ」とさらりと伝える。正直であることが信頼にもなっている。

(5) 笑い飛ばし上手であること
おばちゃんのまわりは笑いが絶えない。自分の辛い状況も笑い飛ばすし、面倒な人がいても「そんな人もいるよねぇ」、面倒なことがあっても「そんなこともあるよねぇ」と笑い飛ばされると、暗い気分も吹き飛ぶ。愛されるには、からりとした明るさが必須。

「人が幸せであることが幸せ」で生きる

桂子おばちゃんと知り合って、こんな思いに至った。"愛のあるおばちゃん"こそ、世の中の救世主ではないかと。
子どもから働く人、ママ、高齢者まで孤独になった現代では、誰もがわかってほしい、愛されたいと思って生きている。が、それに応えてくれる人が、圧倒的に不足している。
おばちゃんの愛は、「みんなで幸せになること」が基本だ。「自分さえよければ」ではなく。人の幸せを自分のことのように喜ぶし、人が困っているときは一歩踏み込んで助ける。
ただし、待っているだけのケチな人は愛されない。自分から惜しみなく愛を与える太っ腹な人は自然に愛される。私もそんな"愛のあるおばちゃん"になりたいと思っている。