月刊「PHP」2019年5月号 裏表紙の言葉
携帯電話やメール、そしてインターネットによる種々のサービスにより、気持ちや情報を伝えるのに、これほど便利な世の中になると誰が想像したことだろう。
ただ、それによって人と人との相互理解が進んだかといえば、残念ながらそうではない。いさかいは減るどころか、コミュニケーション不足による事故や事件は、日々増すばかりである。
その一因は、情報ツールにおける些細な誤解があるからではなかろうか。たとえば、スマートフォンでメールを書き、送信ボタンをクリックすれば、送信者側はその瞬間に伝えたと思い込み、見ていない受信者側をつい非難してしまう。また、単なる言葉の打ち間違いが、相手の心のしこりとなって、あとで大きなトラブルに発展することもある。
伝える手段が多いのはありがたい。けれども、伝え方には長短があり、手間がかかっても直接話し合ったり、手紙を書いたりすることもやはり重要であろう。
情けに報いると書いて情報である。伝わればよいのではなく、よく伝えようとする心がけを忘れずにいたい。