月刊「PHP」2019年4月号 裏表紙の言葉
日常気づかないものの、私たちはそれぞれ心の中に猛獣を飼っているという。満たされていれば、草原にいるかのごとく悠然と背中を伸ばし、気持ちよく昼寝をつづけている。
ところが、いざ自我を傷つけられたり、不条理に遭ったりすると、心中の猛獣は矢庭に唸り声を上げ、毛を逆立てて牙をむく。
人が感情の虜となって節度を失い、暴言や暴力に及ぶときなど、その心は虎とも豹ともしれない猛獣の心に、まさしく豹変している。悔やんでもあとの祭りなのである。
では心中の猛獣を飼いならすためにはどうすればよいのだろう。たとえば、最近では怒りをマネジメントする研究や、座禅やマインドフルネスといった瞑想の活用、掃除を活かした修養活動もさかんと聞く。
心をコントロールするための試みが様々な形で実践されていることはありがたい。とはいえ、それ以前に大切なのは、自分自身が、まず人として成長しようという思いを抱くことではなかろうか。王者の風格を擁する自分を目指してこそ、獣性は抑えられるに違いない。