月刊「PHP」2019年1月号 裏表紙の言葉
子どもが描く絵はいずれも天才の冴えがある。ところが小学生になり、中高生から大人へとなるにつれて、次第に描けなくなってしまう。
うまく描かなければというあせり、恥はかきたくないといった緊張。あるいは、技法を知らないからという言い訳や理屈が邪魔をして、筆が一向に進まなくなるのである。
絵を描くコツは、こうした上手に描こうという捉われから、まず己を解放するところにあるのではないだろうか。他人の眼を気にせず、自分らしさに徹すれば、描く楽しさを思い出し、再びうまく描けるようになるに違いない。
人生も同じで、幼少のころ思い描いた将来は自由自在であったはず。それが年を重ね、学年の階段を上るうちに、過去の成績や他人との比較、社会の価値観に影響を受けて、つい思考が窮屈になっている。失敗作にならないよう汲々としてしまうのかもしれない。
自分の人生の絵を描けるのは自分だけ。大切なのはその絵を自在に描くことではあるまいか。さあ、年の始めにふさわしい今こそ、夢のある絵を描いてみよう。