株式会社 玉寿司 代表取締役会長 中野里孝正 様
「築地玉寿司」は、1924年に開業した老舗の江戸前寿司店。現在は築地の本店をはじめ32店舗を展開、職人の握った寿司を気軽に食べられる店として人気を集めています。
玉寿司様は、地域への恩返しとして、2017年から地元の学校に『PHP』を贈呈されています。代表取締役会長の中野里孝正様に、人の心を大切にする経営哲学や、『PHP』への思いをうかがいました。
「玉寿司の寿司が食べたい」の言葉に支えられて
最初に、大正から続く玉寿司の歴史についてうかがいました。
Ｑ ご創業の経緯からお聞かせください。
Ａ 江戸時代から続くマグロ問屋の家に生まれた父が、1924年に築地に開いた寿司屋が当店の始まりです。父は1945年に他界し、「玉寿司を頼む」と言い残したその思いを継いで、1948年に母が店を再開しました。
Ｑ 終戦の直後で、ご苦労も多かったのではないでしょうか。
Ａ 戦後すぐのことで若い板前もおらず、職人が見つかるまでは、母が自ら寿司を握りました。配給制度で米の売買が制限されていましたから、お客様に米を持ってきていただき、交換という形で寿司をお出ししたものです。4人の子どもを抱えながら、知恵と努力で店を再開した母は、当時の典型的な、強くたくましい戦後の女性の一人でした。何よりお客様の「お宅の寿司を早くまた食べたい」という言葉が、母を支えてくれたのだと思います。
「心」が寿司を美味くする
次に、老舗を支える経営観をお話しいただきました。
Ｑ 寿司店という仕事のやりがい、喜びとはどのようなことですか。
Ａ 米と魚を使った料理の中で、一番美味しく、飽きずに何度でも食べたくなるのが寿司だと、私は思っています。その寿司を提供する仕事に携われるのは、誇らしく、幸せなこと。「美味しかった、また食べに来るよ」とお客様が言ってくださるのは、何物にもかえがたい喜びです。寿司を発明した昔の人に感謝しないといけませんね。
Ｑ 100年近く続いている秘訣は何でしょうか。
Ａ 「心」を大事にしてきたことでしょうか。寿司の味は、ネタの新鮮さや米のブランドだけで決まるものではありません。職人がお客様の目の前で作って、直接お出しする料理ですから、職人の心映えも味を左右する大事な要素です。いい寿司を最高の気分で味わっていただけるよう、職人が心を込めて、お客様の心をもてなす――そんな姿勢が、お客様に伝わっているのだと思います。
Ｑ 心を大切にする店であるためには、職人教育も重要ですね。
Ａ その通りです。「心と技を兼ね備えた一流の職人を育てなくては一流店とは言えない」というのが私の持論。2017年には、これまでの蓄積をもとに職人教育のカリキュラムを整理して、「玉寿司大学」と名付けた社内研修制度をスタートし、私が「学長」に就任しました。この「大学」でも、寿司づくりの技術とともに、人間性を磨くことに力を入れています。
『PHP』は「心」を学べる教科書
続いて、『PHP』への感想と、学校への贈呈をどのような思いで行なわれているのかをうかがいました。
Ｑ 地元の学校へ『PHP』の贈呈を始められたのは、どのような理由からですか。
Ａ 人は誰しも幸せになるために生きていますが、幸せになるには、周囲の人も幸せでなくてはなりません。私の場合、幸せであってほしい人の範囲が、家族や従業員から地域の方々へと広がっていったのです。そう感じられるようになったのは、多くの方々の薫陶のおかげでしょう。中学校の同窓会長を長年務めてきたご縁もあり、地元のために何かできればと、『PHP』の贈呈を始めました。
Ｑ 『PHP』を選ばれたのはなぜですか？
Ａ 単純な答えになりますが、『PHP』がいい雑誌だからです。生きる上で基本となる、当たり前だけど大事なことが、わかりやすい言葉で書かれている。それも大上段に構えた文章でなく、ふだんの生活に即した身近な話ばかりですから、記事にこめられたメッセージが、読む人の心にすっと入ってきます。主義主張の押しつけがないところも『PHP』のよさですね。いろんな意見や考え方があっていいと、私は思っていますから。
Ｑ 学校で『PHP』をどのように活用してほしいとお考えですか。
Ａ 明るく前向きなエピソードで、苦しい経験も無駄ではないと伝えてくれる『PHP』は、人生を楽しく生きるヒントが得られる雑誌で、若い方にとってもきっと参考になるでしょう。子どもたちに、そして先生方に読んでいただき、「心」を学ぶ教材として活用していただけたらと願っています。
インタビューにご協力いただいた玉寿司様、ありがとうございました。
※企業名、お役職は取材当時のものです。
【会社概要】
社 名 株式会社玉寿司
設 立 1924年
業 種 寿司調理販売（江戸前寿司）
代 表 者 代表取締役社長 中野里陽平 様
従業員数 700名
所 在 地 東京都中央区
Ｕ Ｒ Ｌ http://www.tamasushi.co.jp/
記事作成日：2018年6月21日
