人を育てれば、地域や社会も幸せにすることができる|

佐藤薬品工業株式会社　代表取締役社長　佐藤　進　様

　製薬会社の受託メーカーとして、医薬品の開発・製造に携わる佐藤薬品工業様。代表取締役社長の佐藤進様は、『PHP』に込められた松下幸之助の経営観や人生観に共鳴し、地域の学校に『PHP』を贈呈していらっしゃいます。
　変化の速い医薬品業界にあって、70年近く安定経営で歩んでこられた歴史と、その歴史を支え続けた経営理念、松下幸之助への思いについてお話しをいただきました。

早期からの新技術導入で業界をリード

　1947年、現会長の佐藤又一が広島から奈良へと移り住み、あかぎれの治療に使われる万金膏という貼り薬の製造販売を開始したのが、当社の歴史の始まりです。
　 1951年に法人化、当初は主に置き薬を製造販売していましたが、1961年、当時まだ新しかったカプセル剤の開発に着手。1964年にイタリアよりカプセル剤の充填機を導入してからは、カプセル剤の受託製造の注文を多くの製薬会社からいただくようになり、医薬品の受託加工が事業の柱となっていきました。現在は、自社医薬品の製造も増えています。
　会長は販売先、仕入先、そして社員を大切にする人でした。資金繰りが苦しいときでも、「仕入れは基本的に値切るな」「支払いは迅速に」と、よく言っていました。現在の社是を定めたのも会長で、社員の幸せのための事業経営をうたい、2002年２代目社長となった私も、その姿勢を受け継いでいます。

「『PHP』を読んで、より良い生き方を学んでほしい」と語る佐藤社長様

会社は社員の幸せのためにある

　近年、売上高は順調に推移していますが、これは製薬会社のご要望に応えるため、絶えず技術を磨き、設備投資を続けてきた、その結果としてついてきたものです。私としては、売上自体を追求することは、今後もしたくないと思っています。従業員のための資金、将来何があっても会社を支えるための資金を、バランスよく確保しておく。適正利益が出ればよしとして、無理をせず、会社の規模拡大より永続を目指す――それが、社長に就任してから16年間、私が心がけてきたことです。
　会社を永続させることがなぜ大事かといえば、会社とは社員の幸せのためにあるものだからです。会社の存在意義は、物づくりよりまず人づくり。それも、会社のための人材育成にとどまらず、どこへ行っても役に立つ人に育てることが会社の役目です。会社を離れても活躍し、周囲に貢献できる人を育てれば、その人を幸せにできますし、その人を通して地域や社会を幸せにすることもできます。
　社長の私がこのようなことばかり言っているので、心配されることもありますが、人づくりは実際なかなか難しいものです。この困難な仕事に生涯をかけて取り組むことが、私にとっての自分育て、自分づくりでもあると感じています。会社の安定経営のためには、やはり経営者の器が大事。経営者が人をつくり、自分をつくり、人としての器を大きくしていけば、それが会社の発展にもつながっていくのではないでしょうか。

若い世代の心身ともに健やかな成長を願って

　松下幸之助さんの経営に対する考え方には、経営者として共感を覚える部分が多くあります。例えば松下さんが提唱された、人、モノ、金、技術を「貯める」ことで安定経営につなげる「ダム経営」。いつでも顧客の要請に応えられ、また不測の事態にも対応できる余裕ある態勢づくりは、当社が志してきたことでもあります。
　当社では講師を招いての勉強会や講演会をよく開きますが、講師には松下さんの影響を受けた方が多くいらっしゃって、その思想は今も生きていると実感できます。人づくりを重視するなど、当社の理念とも重なるその経営観にふれるたび、「わが意を得たり」と心強く感じています。
　事業を通して、人として何を大事にすべきかという根源的なところをつかんでいる企業家は、経営においてぶれることがありません。松下さんはそんな経営者でした。私自身もそうありたいと願っています。
　松下さんの人生観を受け継いで編集されている『PHP』は、生き方を学ぶのにいい雑誌です。地元の学校へ贈呈を始めたのは、若い人が読めば、きっと得るものが大きいだろうと考えてのことです。
　製薬業者である私たちには、保健衛生に貢献する使命があります。地域の方々の健康をサポートすることも、大事な役割のひとつ。県立野球場の改修など、当社は地域貢献にも力を注いでおり、『PHP』の贈呈も、大切な地域貢献活動の一環として行なっています。若い世代には、より良い生き方とは何かを知り、心身ともに健やかに伸びていってほしい。当社の活動が、その一助となれば幸いです。

satouyakuhinn 3-1.jpg 県立野球場の命名権獲得も地域貢献活動のひとつ