
第一話 優しい怪異
桜風堂書店にカフェを併設することになり、その準備を進めていた一整は、ある少女をよく見かけるようになる。店内で、町のどこかでふと見かける少女は、誰かに似ているようで、しかも不思議なことに、見かけるごとに成長しているように思えるのだ。その少女は、カフェ開業を手伝いに桜野町を訪れた、卯佐美苑絵の前にも現れて……。
第二話 秋の旅人
台風がやってきた日、中学は途中休校となったが、桜野町に戻るバスが運休となったため、透、楓太、音哉と、長い髪の転校生の少女の四人は、学校に残ることになった。そんな中、楓太が、桜野町に伝わる龍神と狐の伝説について話し出す。夕方になってバスが復旧し、四人は帰途についたが、転校生の少女が降りたのは、桜野町の手前の山の中の、誰も住んでいないような場所のバス停だった。
第三話 時の魔法
いつものように休みの日に桜野町を訪れ、桜風堂を手伝っていた卯佐美苑絵。その日、泊まったホテルで、苑絵は向かいの部屋から、子どもが泣いている声を聞く。放っておけないと、その扉を開けるのだが……。翌朝、月原一整は目が覚めた瞬間、なぜか嫌な予感を覚え、苑絵の泊まるホテルに向かう。
1963年長崎県生まれ。『ちいさいえりちゃん』で毎日童話新人賞最優秀賞、第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。「コンビニたそがれ堂」「花咲家の人々」「竜宮ホテル」などのシリーズが人気で、大人の読者も増え続けている。『桜風堂ものがたり』『百貨の魔法』で本屋大賞に2年連続ノミネート。
書店に勤める青年、月原一整は、人づきあいは苦手だが、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てることが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。しかしある日、店内で万引きをした少年を一整が追いかけたことが、思わぬ不幸な事態を招いてしまう。そのことで傷心を抱えて旅に出た一整は、ネットで親しくしていた、桜風堂という書店を営む老人を訪ねるため、桜野町を訪ねるのだが……。
読んで真っ先に思ったのは、私達は本屋をあきらめない。本のある世界に生まれて来てよかった! 本を愛する全ての人に届きますように。
山田恵理子 うさぎや矢板店
この小説には、書店を取り巻く厳しい現実が描かれている。けれど、それ以上に、本を愛する人たちの強い熱意と想いと希望が描かれている。
竹村真志 三省堂書店神保町本店
「一緒にがんばろう」と「仲間はたくさんいるよ」と言われているようなそんな感覚を感じさせてくれる物語です。
奥山由子 戸田書店静岡本店
物語の世界の中で起こった奇跡が、現実の世界で奮闘している多くの書店にも起こりますように。
峯森和代 SuperKaBoS鯖江店
こんなに幸せな気持ちになれるなんて、書店員をやっていて本当に良かったです。
小椋さつき 明屋書店厚狭店
ただ悲観してばかりではいられない、今私がやれることを頑張ろう!と勇気ももらえました。
伊東佳子 ラフレ書店
子どものころ、本屋という場所はまるで夢のようでした。『桜風堂ものがたり』を読んでいると、あの懐かしい場所を思い出します。
波多野彩夏 書店員
村山早紀先生ありがとう。明日も背筋を伸ばしてレジに立ちます。
C.U 水嶋書房金剛店
桜野町にある桜風堂書店を託され、仲間たちとともに『四月の魚』をヒットに導いた月原一整。しかし地方の小さな書店だけに、人気作の配本がない、出版の営業も相手にしてくれない、などの困難を抱えることに。そんな折、昔在籍していた銀河堂書店のオーナーから受けた意外な提案とは。そして桜風堂書店を愛する人たちが集い、冬の「星祭り」の日に、ふたたび優しい奇跡が巻き起こる。
「秋の怪談」:桜風堂の仕事を手伝う少年・透は、友人と町外れの「幽霊屋敷」に向かうが……。
「夏の迷子」:桜野町からの帰り道、迷子になった柳田を救った声とは……。
「子狐の手紙」:渚砂は森の中で、何年も会っておらず、病床にいるはずの父と出会う……。
「灯台守」:かつて家族と哀しい別れをして天涯孤独の一整。しかし、彼と暮らす猫が気づいていたこととは……。