松下幸之助は明治に生まれ、大正、昭和、平成と日本の激動の時代を駆け抜けました。和歌山の名士の家に生を享け、何不自由なく幼少期を過ごしましたが、突如、一家が破産。小学校4年生の時、単身で大阪に丁稚奉公に出され、その後も幾度となく窮地に立たされ、孤独と絶望の淵をさまよいます。
転職、独立、窮乏生活、世界恐慌、敗戦、大借金、大不況、廉売合戦、外国企業との熾烈な競争……。松下幸之助の生きた時代は、価値観が 180 度転換し、世の中が急激に変化して、さまざまな課題が行く手を阻む時代でした。しかし松下幸之助は必ず以前の状態より良くなって復活を遂げます。
なぜ、松下幸之助は、この大激動、大混乱の時代を生き延びることができ、なぜ、発展飛躍の機会とすることができたのでしょう。
それは松下幸之助が時代のありとあらゆる変化、森羅万象、宇宙万物一切に思索を馳せながら、ただひたすらに人間というものの本質を凝視し続けた、稀有な経営者であるからではないでしょうか。
松下幸之助は長年にわたる経営活動や人生を通じて得た教訓、さまざまな研究成果を後世に伝えるため、膨大な記録や著作を遺しました。それは今、PHP研究所に大切に保管されています。この独自の経営観、人生観、人間観こそ、未曾有の激動の時代を生きる私たちに、大きな勇気と指針を与えてくれるものと確信してやみません。
そんな難局に強い松下幸之助の経営理念を、本人が直話として語った講話を収録したDVDや、ベストセラー『商売心得帖』をひも解き、「商売とは何か」「真のお客様満足とは何か」を体系的に学ぶ通信教育をご紹介します。
パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者、PHP研究所創設者。
明治27(1894)年、和歌山県に生まれる。9歳で単身大阪に出、火鉢店、自転車店に奉公ののち、大阪電灯(現関西電力)に勤務。大正7(1918)年、23歳で松下電気器具製作所(昭和 10 年、株式会社組織に改め松下電器産業に改称)を創業。昭和21(1946)年には、「Peace and Happiness through Prosperity=繁栄によって平和と幸福を」のスローガンを掲げてPHP研究所を創設。
昭和54(1979)年、21世紀を担う指導者の育成を目的に、松下政経塾を設立。
平成元(1989)年に94歳で没。
経済誌などが実施する「尊敬する経営者」ランキングなどで、つねに上位に顔を出す松下幸之助。
実際、松下の著作などに啓発されたと語る経営者、ビジネスリーダーは少なくありません。
「ほめたほうが伸びる人もいれば、叱ったほうが伸びる人もいます。収入が増えることを喜ぶ人もいれば、仕事の内容や質が高まることを喜ぶ人もいます。私が右を向けと言っても、一割くらいの人は右を向かない。それが人というものではないでしょうか。ですから、組織の全員をやる気にさせるというのは、ほんとうにむずかしいことなのですが、松下さんはそれが実にうまい。人と組織をやる気にさせる天才だったのだと思います」
エイチ・アイ・エス会長
澤田秀雄氏
松下幸之助の経営哲学が当代の名経営者に支持されるのは、使命感、基本理念、また方針や目標も、みずから心の底から納得でき、悟りともいえるほどのものにたどりつくまで悩み、考え続けることによって生み出されたものであったからではないでしょうか。
不確実なリスクと向き合う現代社会で、「本当に大切なことは何か」を考えることは、経営の舵取りにおいて大変重要な要素となるのではないでしょうか。松下幸之助のものの見方・考え方は、順境のみならず幾多の不況や困難を乗り越えてきたという自身の経験の中から生み出された思想ゆえ、時代を問わず多くの人々の範とされてきています。現下の困難な時代だからこそ、普遍性を持つ松下幸之助の言葉をまとめた本DVD集を従業員への理念の浸透や、経営の在り方を考える一助に是非お役立てください。
商売の道ひとすじの人生。松下幸之助が情熱をもって語る「商い」の真髄。商売の基本・実践・向上の心得を全25話に編纂。顧客満足の原点がここに甦ります。
……私が小売屋さんであるとします。で、隣にスーパーができたとします。そして、ある物は安く売るという風にいたします。そうすると、自分の店は困るなと、私は心配するわけであります。しかし、今の私はそれを心配しません。(中略) 隣にできたスーパーの経営者の経営いかんにもよりましょう。それはすぐれた人であり、すごい魅力のある人であり、また実際において、われわれの気のつかないようなすばらしい経営法というものを案出して、そして町の人気をさらっていくようなまあ、何万人に一人というようなすぐれた人であれば、これはあるいは自分の得意先が半分なくなるかわからんと私は思うんです。けれどもまずそういう人は現実にはございません。すぐれた点があるが、一面にまた欠点もあるのが人間の姿であります……
経営者の一挙手一投足が、事業経営全体に大きな影響を与えることは、あらためていうまでもありません。松下幸之助は、パナソニック(旧松下電器産業)を創業して以来、その過程で経営者の責任をどのように考え、実践してきたのか。自身の体験をもとに語られています。
……ソケットというものが10銭かかるんです、原価ね。それを8銭で売るんですよ。そしたら2銭損でしょう。それが5、6軒しかないんですよ、日本に製造する会社が。私どももその一つです。これではあんまりもったいないやないかということで、協調したわけですよ、東京で。まあ、独禁法もない時ですから。それで調印してですよ、で、何日から、つまり要するにそれを実行するとこういうことになったわけです。それで、私はいやしくも男たる者が記名連判したんやからね、実行してやろうと思って私はさっと実行したわけですわ。それから2、3カ月たってから、また代理店会を開いたんですよ。そしたら非常にごうごうたる非難ですよ、ぼくに対してね。(中略)
(他の会社は)やっていないのですからね。やっているけども、いや、もう今度は協調のために、今のうち2万個買うてるとか、今のうちに1万個買うてる、それは前の値にするということを、みなやっているわけで、やらないのはうちだけですわ、それで憤慨するのは当たり前ですわ。そこで……
「決断するのが経営者の仕事だ」といわれます。長きにわたって、経営者として決断の日々を重ねた松下幸之助は、企業にとってきわめて重要な経営者の決断について、どのように考えていたのでしょうか。
……今まで世間では、「人間は苦労せないかん、苦労せないかん、」ということを言われます。先輩が後輩に教える第一として、「苦労せよ、苦労せんことには一人前になれない」ということを教えたものであります。私ども子どもから青年にかけまして、先輩から常にそういうことを言われたんであります。で、その時分は、大部分のものはそれを素直に承認しておりました。(中略) 「ああ、つめたいなあ」と、ぞうきんで寒中、氷のはるような時に、ふきそうじをするということは非常につらいことであります。しかし、こういうつらいことがやがて成功のもとになると先輩が言うておる、とこう考えてみますると、それは辛抱ができるんであります……
松下幸之助が実践から学び考え抜いた“経営者としての心構え”を説く。16,000名の経営者に気づきと指針を与えた直話集が、最新技術によるクリアな音声と映像で再刊行。
※本DVD集は1980 年発刊の同名カセットテープ集、1988 年発刊の同名CD集をDVD化したものです。写真に音声をつけて動画として編集したもので、講演映像ではございませんので、あらかじめご了承ください。
松下幸之助は、正しい経営の基本理念をもつことを重視していました。“本立ちて道生ず”といわれるように、根本となる事業理念があればこそ発展の道筋も見えてくるのではないでしょうか。
……少なくとも今までは別といたしまして、これからは、お互い企業は国民全体の共有財産である、共有の事業である。それを便宜に自分たちが預かって経営しているんだから、この企業というものは非常に大事にしなくちゃならんのだ。企業が発展するか発展しないかということによって、国民の福祉が増進するか増進しないかということに結びつくんである。だから非常に大事なものであるということを考えるときに、そこに非常に強いと申しまするか、非常に力強いものが生まれてくると思うんであります。これが、私は企業に対する一つの考え方だろうと思うんです。……
経営者の一挙手一投足が、事業経営全体に大きな影響を与えることは、あらためていうまでもありません。松下幸之助は、パナソニック(旧松下電器産業)を創業して以来、その過程で経営者の責任をどのように考え、実践してきたのか。自身の体験をもとに語られています。
……うまくいってるときはね、「まあしっかりやってくれ」「まあ、みなさんやってくれ」と言うて、部下に命じて事すむ。それはそれでいい、そういうときもあってもいい。しかし、事、非常時に臨んだときはそんなことではいけない。やっぱり率先垂範する。身をもって率先垂範するか、精神的に率先垂範するか、その両方をもって率先垂範するか、何らかそういうものをもたなならん。そうすると無言のうちに、空気が変わってくる。そういうことが、私はまずこういうような非常時に際しての、つまり責任者もしくは所長とか首脳者の私は責任態度やないかと思うんですね。……
「決断するのが経営者の仕事だ」といわれます。長きにわたって、経営者として決断の日々を重ねた松下幸之助は、企業にとってきわめて重要な経営者の決断について、どのように考えていたのでしょうか。
……われわれは常に、何が正しいかということを考えつつ仕事を進めますが、その根底をなすものは素直な心でものを見ようと。いいかえますと、白は白というように見えるように、青は青と見えるように、黒は黒と見えるように素直にものを見ていこうと、こういうことであります。そうすると白を黄色に見たり、赤色に見たりするようなことはなかろうと思いますから、判断に過ちがないと思うんであります。……
企業を着々と繁栄、発展させていく経営者もあれば、志半ばにして、挫折の悲哀を味わわざるを得ない経営者もいます。そうした違いはいったいどこから生じてくるのでしょうか。長年の実業体験に基づく松下幸之助の話の中から「成功の心得」ともいうべきものを収録しています。
……雨が降れば傘をさすということはきわめて自然の状態でありまして、暑くなれば薄着になる、寒くなれば厚着になるということでございますが、これはもう誰しもそのとおりやっておるんでありますから、いわばみんなが天地自然の法に基づくところの生活方法をやっておられるということになろうかと思うんであります。しかし、事が商売ということに入りますると、どうも天地自然の法にかなったようなやり方をなさらないような経営を、私はちょいちょい見受けるんであります。そういうところは、概して失敗していく。そうでないところは成功していく。いいかえますと、天地自然の法にかなった経営法をしておるところは成功していく。……
“事業は人なり”といわれます。一代で世界的企業を築き上げた松下幸之助は、その経営を進める過程で、“事業は人なり”の信念を貫き通しました。人を育て、活かすことに心血を注いだ松下幸之助の体験の中から「人を活かす心得」というべきものを収録しています。
……社長は仕事そのものは、あるいは下手かもしれない。また技術もわからんという点もあるかわからない。しかしこの会社を社会のためにも、お得意先のためにも、従業員のためにも、会社自体のためにもよくしたいという強い熱意というものが、二万人のうちに一番強いものをもたなければ社長としての意義がないと私は思うんです。社長の責任というものはそうだ、一番熱心である、一番熱意をもっているんだ、その次に副社長が社長についでの熱意がある、そういうようになれば私はもう一番いい。……
人づくりの大切さを重視した松下幸之助は、人材の活用すなわち人を活かすこととあわせて、人材育成にも心血を注ぎました。みずからの体験に基づく松下幸之助の話の中から、「人を育てる心得」ともいうべきものを収録しています。
……いかなる場合といえども、われわれのやはり一つの強い信念、それが正しいもんであり、それが国の安定と発展に寄与するもんであり、従業員の福祉に通ずるもんであるならば、断固、それを堅持して必ず容れられると思うんであります。みなさんの頭が、物をつくることもまことに大事であるが、その大事なものをつくるためには何が必要であるか、それは人が必要である。正しいものの考え方を保持するところの人が必要であるというようにお考えくださるならば、大事な製品をつくるために、まず人をどうするかということに、みなさんの頭がお働きをされると思うんであります。……
「事業を発展、繁栄させる要諦の一つは、その経営にいかに多くのすぐれた衆知を集め得るかということである。だから私は、いつも衆知を生かした経営の実践を心がけてきた」——松下幸之助の言う衆知経営とは、いったいどのようなものでしょうか。
……私は会社の経営にいたしましても、会社に今二万五千人あれば、二万五千人の衆知によるところの経営が行われない限りは、この会社はやがて行きづまるだろうと思っているんであります。偉人の経営で発展しても、やがて崩壊するでありましょう。賢人の経営にいたしましても、やがて崩壊するでありましょう。衆知によらないところの経営以外には、ほんとうの神の経営というものはないと思うんであります。衆知によるところの経営は、いわゆる真の民主主義の経営であります。真の民主主義には衆知が集まるんであります。そう私は考えていきたいと思うんであります。……
事業を進める過程では、時に不況に直面し、逆風、波瀾の中での経営を余儀なくされます。不況、不景気に対して経営者がどう備え、どのように対処していくかが企業の盛衰を大きく左右することはいうまでもありません。松下幸之助の体験に基づく不況克服の心得を収録しています。
……とかく人間というものは、十年平和が続く、十年安泰が続くと、治に居て乱を忘れるという傾きになります。いいかえますと、非常に内部に脆弱性というものが醸されてくるんであります。常に荒波に対している、常に乱に直面していると、それはそういうようにならないんであります。たえず心がまえというものは緊張しています。しかし、これは一面にいいが、一面にそれは決していいことじゃありません。そう常に乱ばかりに対するような姿は人生の望みではありません、目的ではありません。やはり泰平にして平和な生活を楽しむということが、われわれの欲するところであります。しかし、だからといってそういうことに慣れますと、人間というものはとかくその平和に酔いしれてしまうという傾きがございます。……
松下幸之助は、経営者には“朝(あした)に発意、昼に実行、夕べに反省”の心がまえが大切だと説いています。事業盛衰の鍵を握る経営者は、みずからのあり方について、またその仕事について、日々どのような反省を加えていけばよいのでしょうか。
……自分は自己認識をして、そして過ちなきを期してきた。こういうように、私自分で考えているんです。自己認識をせざる人は、過ちをおかす場合が多くなります。自分の力を低く見すぎても仕事はできません。自分の力をば誇大に見たならば失敗をいたします。そういうところが非常に大事やと思うんです。みなさんはこれから幾多の仕事をなさる。一年ごとにどういうような変化があるかわからない。しかしその場合でも、みなさんは、みなさん自身というものを採点していかなきゃいかんと思うんです。“今の自分は五十点の力がある”ということを自分で考えることができるかどうか。それが正当にできたならば、非常に私はおもしろいと思うんですね。……
経営者が日々の重責を全うしていく上で心の支えとなるのは、やはり経営者としての仕事のやりがい、生きがいというものでしょう。事業人、産業人としての使命達成に文字どおり全身全霊を打ち込んだ松下幸之助は、その生きがいをどこに求めていたのでしょうか。
……非常に困難な時代である。商売の競争も非常に激しい時代である。三年ほどぼやぼやしてるともうすっかり地位が変わってしまうほど、商売も激変する時代である。そら、昔の時代のほうが悠長であるから、非常に安定してる。今はもう安定も何もない。安定という言葉はもうなくなるほど激変の時代である。そういう時代でありますけれども、だから困るんやなくして、だからおもしろいんだと、こういうように考えますと、私は今日は、みなさんもさようでありますが、今日生きておるところの人びとというものは、過去のいかなる人の時代よりもおもしろい時代である。おもしろいというよりも、非常に有意義な時代であると。この時に生きて、そして、それぞれの思いをもってわが仕事に対して取り組んでいくということが、非常に恵まれた世代に生きたもんだという考えをもったらどうか。少なくとも私は、そういうようにもたなんだらいかんぞと、私は、自分で自分に言うて聞かしてるんです。……
「経営者の姿勢」「事業観」「不況観」「衆知を生かす」など、松下幸之助が経営哲学を自ら語った映像講話集。
……不景気になってはじめて商売を知ると。不景気になってはじめてなすべきことを知る、ということでは、今度の不景気になったことは、松下電器にとって非常に幸せやと、私は思うてんのや。だからこの不景気に皆さんがいろいろ勉強しておられることは、大変なことと存じますけれども、この機会にですな、不景気こそわれわれはほんとうのことがわかるんやと。不景気ならなんだらわからんと。(中略)不景気が大きな商売の師匠である。こう考えたらええと………
「無税国家論」「教育問題」「高齢者福祉」など、松下幸之助が広く政治や社会問題について語った映像講話集。
……民主主義の国家で一番大事なものは何かと言うと、その民主主義を支えていくところの良識というものがありますな。良識というものが崩れたなら、民主主義というものは非常に危険なものである。すぐに勝手主義になっちまう、こういうことが私は言えると思うんです。(中略)民主主義というものは、非常に高度な常識というものを養っていかなきゃならん。そういう国民の良識が非常に低い状態において民主主義というものを強調しますと、非常に混乱してしまうということになりはしないかという感じを、私は最近持つようになりました。………
ベストセラー「商売心得帖」の通信教育版!昨今の事例やエピソードなど具体的な事例とあわせて読み解き、商売の原理原則を実践的に学ぶ。
学習の内容と流れ(一部抜粋)
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