井上香織先生、こんにちわ。

　遥と言います。高校３年生、１７歳の女の子です。

　わたしは中国国籍なのですが日本で小学校時代をすごし、その後また母国に戻りました。

　今、誰にも言えない悩みがあるので聞いてくれたら嬉しいです。

　わたしには同い年で同じクラスの彼がいます。彼とは高校２年生の時クラス替えで今のクラスになりました（２年生と３年生の間にはクラス替えはありません）。

　最初、普通のクラスメイトでしたが、席が私の前ということもあり次第に仲良くなっていきました。そして席替えでなんと同じ席になったんです！そして私たちは自然に付き合い始めました。

　毎日メールしたり、電話したり、たまの休みにデートしたり、本当にすごく楽しくて彼への気持ちもどんどん深くなっていきました。

　そして、高校３年生になりました。

　中国では日本と違い大学に行くのが当たり前です。就職のため、誰もがより良い大学を目指します。そして膨大な生徒数のため、競争の激しいです。

　私の彼はどちらかといえばいい生徒の方に入ります。それでも受験のためには毎日10時間以上勉強しなくてはなりません。

　こう言ったら彼がとても頑張りやさんに聞こえるのですが、本当は甘えん坊で勉強が大嫌いな人なんです。

　やっと本題なんですが、実は私は今年から日本に戻り、日本の大学を受験するんです。簡単に言ってしまえば遠距離恋愛になるんです。

　わたしの成績では中国でいい大学に入るのはとても困難で、親も日本で仕事してるので私が日本で大学生活を送るのを望んでいます。

　彼との恋愛は本気です。前の２回の恋愛で傷ついた私が今唯一信じられる人です。本当に暖かくて、優しくて、私に前を向いて歩いていくことを教えてくれた人です。彼もそう思ってくれています。これは間違いありません。

　中国の高校では男女の恋愛が禁止され、オープンに付き合うこともできません。彼も親に携帯を止められて、休み時間や食事の時間だけが彼といられる時間になりました。

　彼と離れるのは…正直とても怖い。今は二人とも日にちのことは口にしないようにしています。

　今、精神的にもお互いすごく頼っているんで、離れた後彼の精神状態も心配なんです。

　彼のために私が日本に戻った後のためにノートを用意しました。

　受験までの148ページ（毎日１ページ私がいろんな事を書いています）とそれと同じ枚数の写真。あと、カセットテープに録音して残そうと考えています。

　私に出来るのは本当にコレくらいでもどかしいです…。

　離れた後、受験が終わる６月までの間、ほとんど音信不通になります。そのあとも私の方は受験が終わっていないので夏休みも中国には帰れません。

　全部片付いて会えるの２年くらい後なんです。

　彼の受験が終わればメールとか電話とか手紙とかは出来ると思うんですけど…。

　彼の成績も気になりますし…私も自分の受験で大変だと思うんです。

　私たちはお互い信頼しています。でも…やっぱり不安で…この恋はわたしにとってすごく大切な恋なんです。絶対失いたくありません。恋はこれで最後にしたいんです。

　二人とも将来についても真剣に話しました。私が大学卒業後中国に戻り就職して、結婚は早ければ早いほどいいと決めてるんです。

　こんな事誰にも言えなくて…本当に不安だらけで先生のアドバイスが聞きたいんです。お願いします。

（17・女性・学生）

　こちらの不手際でお返事が遅くなってしまい、ごめんなさい。

　中国の受験事情は多少は知っていたのですが、実情は想像以上に苛酷なのですね。

　二年もの間、遠距離になることを目前にし、とても不安なお気持ちだったことと思います。

　でも、あなたたちは、将来のこともきちんと考え、今どうするべきかを熟考した上で、この道を選んだのです。

　離れている時間が、二人を隔てる障害ではなく、お互いを成長させてくれる時間と考えてみたらどうかしら？

　もちろん、彼に逢いたくて逢いたくて、耐え難いほどの淋しさがこみあげてくる刻もあるかと思います。もしかして、彼がとても魅力的な女の子と出逢い、心動かされるようなことがあったりしたら、どうしようと不安になることもあるかと思います。 　けれど、おそらくそれは彼にとっても同じこと。

　そんな時間の蓄積は、きっと二人の絆を深めることになってくれる、この辛い時期を乗り越えれば彼と笑顔で逢えるのだと信じましょう。

　以前、私は、桜あずさというペンネームで「フェアリー・ムーンライト」という小説を書いたのですが。

　その中で、ヒロインの瑠璃という女の子は大好きな彼と遠距離恋愛せざるをえない状況に陥ります。しかし、別離のとき二人は、こう約束するのです。

「毎晩、同じ時刻に夜空の月を見上げよう」

　遠く離れた二人には、それぞれ様々な出来事が起こりますが、その約束はいつも二人の気持ちを強く結びつけてくれていた……そんな物語です。

　自由に連絡もとりあえない状況であるなら、彼とそんな「約束」をするのもいいかもしれません。

　心から彼を信じること。

　そして、彼を愛する自分の気持ちを信じること。

　それが今のあなたにいちばん大切なことではないかなと思います。

追伸

　二人で描いた「未来予想図」の第一歩はもうはじまっています。

　まず、今のあなたがしなければならないこと……それは大学合格です。

　離れていても、彼の応援はあなたの心に届いていると思います。

　頑張ってくださいねっ。

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