企業の本質的な目的や存在意義を理解し、理念や価値観を中心にすえて経営を行うことを理念経営といいます。利益の追求だけではなく、社会的な使命を重視する手法です。
理念経営では、組織の方向性や行動指針を明確にし、経営理念として掲げます。経営理念を従業員と共有し、浸透させることで、組織全体がその理念に基づいて行動できるようになります。これによって従業員同士や顧客、社会との信頼関係を築き、長期的な成長をめざすことが特徴です。
一方で、経営において「人を生かす」という言葉は、経営者と従業員が自他ともに育ち合い、生き合うという意味を含んでいます。そして「人を生かす経営」とは、人を育て生かし、社会に貢献するということです。
つまり、「人を生かす」理念経営とは、経営者自身を含む社員の成長に主眼をおき、こうした人材で構成された組織が、世のため人のために役立つ事業とは何かを理解し、商品制作や販売などに邁進する経営といえます。
本書を出版するに至ったのは、日々、身近に起こっている企業における「人」の問題、とりわけ、従業員が育たない、入社してもすぐに辞めていく、思うように成長していかない、理念が浸透しない、後継者がいない等の現実を、私自身も体験・経験もし、今日的な問題であると感じているからです。
このような「人」の問題は、日常的に各企業の中にもあって、これまで中小企業経営者の仲間と共に、その解決のための学びと実践に取り組んできました。
私はその体験と記憶を本書で辿りながら、「人を生かす経営」が一人ひとりの素晴らしい人間力を発揮できる企業づくり、社会づくりとなり、ニッポンを元気にするライトワーク(地域を照らし、歴史に残る「史実」)となるよう、応援したいと考えています。
(「まえがき」より一部を引用)
1943年、石川県生まれ。佛教大学卒業。京都日産自動車株式会社入社。営業部での勤務中に病気を患い入退院を繰り返した後に退職。健康の大切さ、身体が資本であることに気づき、開業を決意。自宅の4畳半で個人商店・南近畿ミル商会を創業する。法人化のため、1977年、近畿ミル株式会社を設立し代表取締役社長に就任。営業を全国に拡大するため、1982年、株式会社ミル総本社に社名変更(業種:特定保健用食品〈トクホ〉、乳酸菌飲料等の製造 販売)。近畿大学薬学部との乳酸菌の共同研究のため、1986年、株式会社バイオアルビン研究所を設立し代表取締役社長に就任。1987年、京都市南倫理法人会に入会。同年、京都市中小企業家同友会に入会(2000年2月、第30回全国研究集会実行委員長、4月、第7代・代表理事に就任。2004年、常任相談役、2006年「人を生かす経営・実践道場(現・実践塾)」顧問に。「自己姿勢の確立」講座講師。2010年、相談役に就任し現在に至る)。1998年、盛和塾南京都(現・修和塾)に入塾(2022年、代表世話人に就任。現・顧問)。2021年5月、株式会社ミル総本社、株式会社バイオアルビン研究所を事業承継し、同時にM&Aを行い、株式会社ミル総本社相談役となり現在に至る。
要約紹介
多くの企業が経営理念を掲げていますが、実際にはなかなか社員にまで浸透していないのが現実です。そのために次から次に生じる課題の対応や目先の利益に追われる「なりゆき経営」に陥っているのが普通といえます。この脱却には、経営理念を目に見える形で成文化・明文化し、従業員の心を動かし、行動をうながすことが不可欠で、経営者と従業員が夢や目標を同じにして行動することが業績拡大への第一歩となるのではないでしょうか。
要約紹介
人の価値観や人生観を「自己姿勢」といいます。自己姿勢が確立すれば、人生や経営の座標軸をもつことができます。これにより、進むべき道が決められます。社員に自己姿勢の確立を求める前に、まず経営者自身をよく知ることです。これは非常に難しいことですが、自分の心に何度も何度も問いかけているうちに次第に答えはみつかります。自社の経営理念を作成・見直しをする際に、自己姿勢が反映されたものであれば必ず社員に浸透するはずです。
要約紹介
「人を生かす経営」を実践し、従業員を幸せにする決意表明として、「経営指針(経営計画など)」を発表しましょう。なりゆき経営から脱却し、羅針盤のある経営(熱い使命感をもつ自己姿勢から生まれた理念に沿った経営)ができるようになれば、いわば木に実を付けること(中期計画・顧客満足・マーケティングなど)もできます。経営指針は経営者と従業員のいわば人生と仕事の未来予想図です。「幸せが持続する」企業を目指す段階といえます。