題字:北村宗介
(C)2013『利休にたずねよ』製作委員会
題字:北村宗介
(C)2013『利休にたずねよ』製作委員会
利休居士が大成させた侘茶は、文字通り、侘び、寂びこそがその真髄だと言われている。そのため、利休居士自身も、禅の悟りを開いた人物で、ただただ枯淡の境地で茶を点てていたと思われがちだ。実際、大徳寺に参禅した利休居士は、大悟の允可を与えられているので、この推測はもちろん一面の正しさをもっている。
しかし、利休居士は、本当にそういう人だったのだろうか。わたしは、利休居士の茶の湯の本質は、むしろ熱いパッションにあると考えている。そんな想像をめぐらせて『利休にたずねよ』を書いた。
田中光敏監督は、原作をじつによく読み込んで映画化してくださった。若き日から切腹にいたるまでの利休の人生を、大胆に、かつ繊細に映像化してくれた。利休役の市川海老蔵さん、妻・宗恩役の中谷美紀さんをはじめとする役者の皆さんがみごとに演じてくれたので、とても素晴しい作品に仕上がっている。
1956年(昭和31年)、京都市生まれ。
同志社大学卒業後、出版社勤務、フリーランスのライターを経て作家になる。
2002年、『戦国秘録 白鷹伝』(祥伝社)で長編デビュー。
2004年、『火天の城』(文藝春秋)で第11回松本清張賞を受賞。
2009年、『利休にたずねよ』(PHP研究所)で第140回直木賞を受賞。
その他の著作に、『まりしてん誾千代姫』(PHP研究所)、『花鳥の夢』『いっしん虎徹』(以上、文藝春秋)、『信長死すべし』(角川書店)、『命もいらず名もいらず』(集英社)、また、「とびきり屋見立て帖」(文藝春秋)、「刀剣商ちょうじ屋光三郎」(講談社)のシリーズがある。
女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭に昇り詰めていく。刀の抜き身のごとき鋭さを持つ利休は、秀吉の参謀としても、その力を如何なく発揮し、秀吉の天下取りを後押し。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、理不尽な罪状を突きつけられて切腹を命ぜられる。
利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出したものとは何だったのか。また、利休の「茶の道」を異界へと導いた、若き日の恋とは…。
「侘び茶」を完成させ、「茶聖」と崇められている千利休。その伝説のベールを、思いがけない手法で剥がしていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。解説は作家の宮部みゆき氏。
信長・秀吉に茶頭として仕え、天下一の茶匠として権威を振るった稀代の芸術家。
【市川海老蔵】
利休の後妻。利休を支える一番の理解者。夫が心に秘める想い人の陰を訝しむ。
【中谷美紀】
利休の茶の師匠。若き利休の美意識に興味を抱き、高麗の女の世話を任せる。
【市川團十郎(特別出演)】
利休を重用し、茶の湯を権力の演出装置として巧みに利用した戦国の覇者。
【伊勢谷友介】
信長の家臣から成り上がった天下人。利休を寵愛するが、やがて切腹を命じるに至る。
【大森南朋】